石垣島でサンゴを移植しています。

サンゴ移植基盤の開発者らと共同でおよそ200株のサンゴを移植しました。石垣島周辺のサンゴ礁再生に寄与すべく、地域のダイビング業者らと共同でモニタリングを重ねます。

このページについて
このページは、りんぱな(当ウェブサイト運営者)が実施しているサンゴの移植試験の報告書です。専門的な表現も多く、少し読みにくいかもしれません。そんな時は読むのはやめて、こちらのサンゴ移植の解りやすい記事をご覧頂くと楽しめますよ!

参考 サンゴを植付ける基地を海底に作ってきました解りやすい記事(石垣島エコツアー.web)

サンゴの試験移植の実施

調査海域

私たちの移植地点は、石垣島の北側、於茂登(おもと)トンネルを抜けた先の浦底湾にある。2006年にこの地に事務所を構え、徒歩とカヌー、合わせて5分で行けるサンゴ礁を、日々のガイドツアーを通して継続的に見て来た。ガイドらは、より深く浦底湾のサンゴ礁を知るため2018年、近隣のダイビングサービスや移植基盤の開発者らと共同でサンゴの移植試験を開始した(沖縄県より特別採捕許可を取得)。

浦底湾

試験内容

  • 細粒分、光を制御した場合のサンゴの生残と成長効果。
  • 砂礫底上と、基盤に固定したサンゴの生残と成長効果。

サンゴの移植方法

本試験では鹿島建設株式会社より移植基盤をご提供いただいた。

参考 石垣島のサンゴ保全活動にコーラルネットを活用鹿島建設Topics

同社が開発した、サンゴを育成させるための「コーラルネット」は、10年程度で自然分解される樹脂素材で作られている。サンゴの生育後は別の場所に移設する必要もなく費用対効果も高い(専用の治具を使用して岩盤などに固定することも可能)。海底からかさ上げして設置することでオニヒトデによる食害リスクや、表土や砂の埋没を避けられ、ネットにつく藻類は魚類が食べるためメンテナンスフリー。自然分解素材のため、万が一台風などで流出したとしても海洋環境への影響は低いと考えられる。

コーラルネットを設置する架台はホームセンターで手に入る素材を用いた。弊社ダイバー3名にて、-1.5〜-5mの海底3カ所に合計9平米のコーラルネット付架台を構築。一般ダイバーでも短時間で構築することができた。潜水器具や地点までの機材輸送は近隣のネイチャー石垣ダイビングサービスに協力を得た。

移植場所の選定には、ガイドツアー時に普及啓発ツールとして利用することを考慮し、一定の潮流があり、且つ台風等の暴浪時に影響を受けにくい浅場を3カ所選定した(沖合の礁斜面への設置も検討したが、移植サンゴの確保やモニタリングコストの点から、観測機の設置のみにとどめた)

礁斜面のサンゴ被度は70%超える場所もあるが、礁湖内、特に砂地(-1~-6m)のサンゴ被度は10%未満の場所が多い。そのため、今回の移植に用いるサンゴは、高波浪時に折れたサンゴ断片や、砂礫底の死サンゴに着床した15㎝未満の小さなサンゴを用いた。

一般的なモニタリング

広い海の中に棲む特定のサンゴを長期且つ定期的にモニタリングするには、様々な技術が要求される。目的のサンゴを探すことは勿論、水中での速やかな記録や補修作業も必要となる。作業中にフィンキックでサンゴを傷つけたり、海底の砂を巻上げるなどして水質を低下させないような遊泳技術も必要となる。

移植や、移植基盤を用いたモニタリング

だが、ネット上にサンゴを集約するとダイバーの行動が制限されるため、周辺サンゴに与えるリスクも大幅に抑えられる。それ故、調査者は熟練したダイバーである必要もなく、市民レベルのダイバーであっても定期的且つ長期的にモニタリングに参加することが可能だ。

コーラルネット上のサンゴは、リグ等を使った写真撮影と水中ノートなどで記録している。写真は常に一定の方向から撮影することで成長量の比較ができる。20mmのメッシュ構造は、写真を用いた成長量の解析のにも役立つ。また「基盤」という構造物に並べられたサンゴはそれだけで人目を引くため、観光客への普及啓発ツールとして高い効果を持つと感ている。今後、地域の学校などへの環境教育等に応用できないか検討している。

また、こうした構造物は魚類、藻類などの動植物を引寄せることから、サンゴと他生物との関係にも気づかされる。藍藻類、海草とサンゴとの関係は特に興味深く、今後も継続して観察していきたい。

サンゴの採捕について

沖縄県ではサンゴの採捕(採取・捕獲)は規則により禁止されている。例えば、台風などで折れたサンゴを採取したり、それを海底に固定することはできない。だが本試験の様な研究や教育、また養殖を目的とした採捕には特別採捕許可が成されることもある。詳しくは沖縄県やサンゴ礁学会のHPにある、サンゴ移植マニュアルなどを参照されたい。

今後の展望

湾内などの浅い砂地や砂礫底などは、赤土や栄養塩の流入、台風時の暴浪の影響などを受けやすく、小さなサンゴは生残しにくい環境のように感じる。こうした場所の保全、再生にはサンゴ移植は有効的であると考えられる。今後検証を重ねていきたい。

海の中は将来に対する不確定要素が多い環境だ。地域の草の根運動を継続し、技術者、研究者らと情報交換、連携を重ね、「サンゴ礁の再生」に寄与していきたい。


移植の中間報告

現状報告

7〜8月は雨が続いたせいか、海水温は30℃前後を保ち、周辺のサンゴも含め大規模な白化は見受けられなかった。ネット上で白化したサンゴは全体の5%未満であり、20日程度で色の回復がみられたものや、藻類に完全に覆われたものもあった。また海底でも、部分〜完全白化するサンゴに目を引かれた。

移植後1ヶ月程度で、基質(コーラルネット)や結束帯を覆う様子も観察され、生育は順調に見える。

台風の影響

9〜10月頭に八重山近海を通過した台風24、25号の影響で、わずかにネット上のサンゴに消失がみられたが、架台に損傷などは無かった。固定方法を改善すれば消失は低減できと感じる。(特に25号は湾内の砂礫を移動させやすい北西の風を33時間継続した。気象庁 伊原間観測所の記録)


参考

移植場所の浦底湾について

浦底湾の面積はわずか2.6k㎡の非常に小さな湾であるにもかかわらず, 八重山全体で見られるサンゴの70%にのぼる種(国内全域63%に相当)が見られる多様性に富んだ海域である. その理由は, コンパクトに凝縮されたサンゴ礁地形の多様さや, 周囲の環境という2つの要素によってもたらさている考えられる(藤岡 1998).

担当者より

架台を構築し、サンゴをコーラルネットの上に並べていくと、マスクの視野いっぱいにスズメダイの群れが飛込んできた。手を止めてしばし呆然と、その状況に見入ってしまった。

「サンゴがあると魚が集る」と言われていることは知っていたが、こんなにも具体的な結果を目の辺りにできるとは予想しておらず、サンゴ礁生態系にとってサンゴは必要不可欠な存在であることを、体験を通して気づかされた出来事だった。ネット上のサンゴ密度によって、魚類や藻類の繁茂量に変化があるかなども今後調べていきたい。


関係団体リンク

参考 サンゴ礁を蘇らせる「コーラルネット®」鹿島建設 参考 ネイチャー石垣島ダイビングサービスネイチャー石垣島ダイビングサービス

写真右は、移植基盤や機材などを運搬したネイチャー石垣島ダイビングサービスのダイビング船。左奥は、八重山の伝統的なカゴ罠漁を行う雅福丸(雅福丸の船長もサンゴ移植を好意的に受止めて、応援してくださっている)。

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