沖縄や石垣島など、南の島好きの皆さんは、海底を覆う美しいサンゴ礁に魅了されたことがあるのではないでしょうか。
近年は気候変動などで海が汚れ、世界中でサンゴが減ってきています。サンゴを増やす活動もあちこちで行われていますが、私たちりんぱなも、地域の草の根活動としてサンゴの移植に取組んでいます。ここでは、サンゴの移植方法として、最もポピュラーな2つの方法をご紹介します。
サンゴの移植には大きく分けると二つの方法があります
サンゴの増やし方(移植や養殖)
- サンゴの卵を採って、大きく育てて海に還す有性生殖
- ドナーサンゴをバキッと折って苗にする無性生殖
1.有性生殖法による移植
サンゴは動物なので卵を産みます。サンゴは雌雄同体が大半で、それらは卵と精子の塊がボール状に丸まったもを海中に放出します。それらを基盤に定着させ、ある程度の大きさになった基盤を海底の岩盤などに固定します。
この方法は、特定のサンゴの卵を採取することも可能ですし、海面で混ざり合った様々なサンゴの卵を採取することも可能です。ですが、卵を基盤に固定するためには陸上の大型水槽で一定期間飼育するか、または海中で卵たちを閉込める装置を作り、そこで一定期間泳がせるなど、大規模な設備投資が必要となるためコストがかかります。
サンゴは法(規則)で採取・捕獲についての決りごとがあり、移植、養殖が区別されています。
2.無性生殖による移植
サンゴは動物ですが、植物を挿木(さしき)するように、枝打ちをして増やすこともできます。
枝打ちはヤットコのような道具があれば苗を確保するのは簡単ですし、枝打ちした物は水中セメントなどで海底の岩盤に簡単に固定できます。ですがドナーサンゴ(採取する親サンゴ)を傷つけて病気にさせてしまうリスクもあるし、枝打ちして増やすものは同じ遺伝子、いわばクローン体になるので、(非現実的な例えだけど)仮に一つのドナーから100、200のサンゴを増産させることが可能だとしたら遺伝的な多様性が損われる可能性があります。
枝状サンゴはとても折れやすいので、もしかすると、折れたものが折れた先で運良く岩などに挟まり、そこから大きくなるという生き方を狙っているのかもしれませんね。
私たちが実行した移植方法
私たちがやりたいのは、サンゴを用いた海中での試験。そのために海中に基地(基盤)を設置し、移植し、モニタリングをします。
大規模事業ではありませんから、有性生殖による移植は規模としてとても見合いません。そのため無性生殖で行うのですが、移植試験をする場所はサンゴがとても少ない場所です。そんな場所からの枝打ちは、生態系全体に悪影響を与えかねません。
そこで、台風による暴浪(*1)や、転石(*2)などが当って折れてしまったサンゴなど、海底に散らばる小さなサンゴを試験に活用できないか提案しました。ところが県の担当者(専門家)は「折れたサンゴなどを移植するのは基本的には許可できない」と難色を示します。それには様々な理由があるので別の機会にお話ししますが、今回はそれを利用しなければできない試験も行う為、この方法で特別な採捕許可を頂きました。
実際のサンゴの移植方法
海底の基地(架台)作りはこちら
移植するサンゴ苗を集める様子はこちら
実際のサンゴ移植の様子はこちらから
この海中のサンゴ基地、皆さんにも実際に見ていただけるエコツアーも開発しています。2019年1月スタートのサンゴツアー、どうぞお楽しみに!
専門用語
- (*1) 暴浪とは = 波や流れが酷い状態
- (*2) 転石とは = 死んでしまったサンゴや小石など海底にある石