石垣島の外来生物、グリーンイグアナを捕まえに(捕獲)

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今日もグリーンイグアナ対策業務に出発です。

今年の冬場は、新築した事務所の内装をやろうと思って、ガイドの仕事は休みにしていたんですが、フリーターだと思われたようで

「イグアナを捕まえてきなさい!」

と指令をうけたわけです。とある会社の部長さんから。

カエルの次はイグアナかぁ。何でもやるぜ!と、お仕事に出発します。

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写真は体調 1.5m以上の成熟したオス個体。

?イグアナは僕らのように自力で発熱するのではなく、木に登って日光浴をして体温を上げ、ご飯を食べたり消化したりします。なので、探す時には遠くの木の上〜〜の方を探して….「いたー!」ってやるわけです。必要な道具は双眼鏡と自分の目!あんなに遠くの生き物も本気になれば見つけられるんだな〜って、自分自身驚きます(笑)

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探してるとヤギや牛やいろんな生き物に出会います.

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足跡も探しますが、鳥なのかイグアナなのか、、これは経験をつまないと判断できません。

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職場の周辺。きれ〜いな海です。いいなー、入りたいなぁ。

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昼食と、休憩時の風景。

そんなこんなで、日々、イグアナを捕りに出かけています。曇りや雨だと見つけられないから作業は中止。お天候を読むのも大変です。

さて、この先、

イグアナQ&Aコーナー

です。

イグアナを捕まえてどうするの?とよく聞かれます。
どうするの?というのは、以下のA,Bの2点かと思います。

A,捕獲した後、どのように処分するのか?

冷凍します。

政令「動物の殺処分方法に関する指針」には、「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる」とあります。イグアナにとっては、これが最も苦痛の少ない殺処分方法です。….書いてて心が痛みます。食べる為に命を頂くなら感謝してできるけど、字に書いて通りの殺処分は、命に対して申し訳がない。

B,そもそもなぜ捕まえるのか?

此に関しては、以下3点について私の個人的な見解を述べます。

1,生態系に影響を与える可能性が高いこと、
2,イグアナが事故防衛のために措る行動が、人間にとって危険となる場合があること。
3,イグアナが持つ未知数の危険性

1・生態系に影響を与える可能性

 イグアナは子供の頃昆虫を食べ、大人になると草食になります。イグアナをペットとして飼育している愛好家の方々に「子供でも昆虫は食べない」と言われたことがありますが、は虫類の権威の先生からは、イグアナが生息する南米などでは昆虫を補食している、との情報をいただいております。石垣島にはイグアナの他に、国が特定外来生物に指定するオオヒキガエルが棲んでいます。石垣島に棲んでいるオオヒキガエルたちが1ヶ月間に食べる昆虫の量は100kgとも言われています。1匹10gにも満たない昆虫が、毎月100kgも減っています。昆虫類を補食する生き物は他にも沢山いて、地球上にこの島にしかいない「固有種」も含まれています。その生き物たちのご飯が減り続けますし、昆虫が減るということは、昆虫が食べているご飯が増えることにもつながります。これを一言で表現すると「生態系が崩れる」となります。
イグアナは大人になると植物を食べます。木の葉っぱなどを食べるので、一見生態系への影響は少なそうに見えますが、イグアナは繁殖能力が高く、また石垣島にはイグアナの天敵となる動物がいないため、イグアナの数が増え続ける可能性があります。イグアナには非常に協力な爪があり、イグアナが昇った木は傷だらけになりますし、木の根元に非常にスケールの大きな穴を掘って生活しています。イグアナが樹木に対して与える影響についてはまだ研究されていませんが、影響がある可能性は充分にあります。従って、グリーンイグアナは石垣島の生態系を変化させてしまう可能性が高いと私は考えます。八重山諸島は東洋のガラパゴスと言われるほど固有種に富んだ豊かな生態系を持つ島々です。地球上でここにしかいない、という生き物たちが沢山います。イグアナが増え続けるということは、その豊かな生態系が損なわれる可能性が高くなるため、できる限り阻止しなければならない、と私は個人的にはそう考えています。

2.イグアナが自己防衛のために措る行動が、人間にとって危険となる場合があること。

※ イグアナの方から人を襲うことはないでしょう。非常に警戒心が強く、数百m離れた場所からも私のことを見つけて逃げ始める個体がいるほどです。そんな生き物が、わざわざ人を攻撃するでしょうか。ないです!但し、イグアナだって襲われたら身を守ります。身を守る自己防衛の措置が、人にとって危険となる場合がある、ということについてご説明します。

ペット愛好家の方から、ブログやFBを通して「私も飼育しているが危なくなんかない!そんな風に言わないで欲しい。イメージが悪くなる!」とコメントをお寄せ頂きますが、まず、論点が違います。私達が相手にしているのはペットではなく、野外に放逐され、野生化したイグアナです。たとえ話を出しますが、犬を飼っている方は当然自分の犬がカワイイでしょう。でも、野犬は怖くないですか?また「飼い犬に噛まれる」という言葉がありますが、実際に飼い犬に噛まれた事がある人も大勢いるでしょう。生き物と接するということは、常にそのリスクを負っているということです。

両生類・は虫類を専門に扱う獣医さんから「イグアナにひっかかれて40針縫った飼い主さんを知ってるよ。(捕獲の際は)気をつけてね」と声を掛けて頂いたことがあります。飼い犬に噛まれることが非常に希であるように、イグアナにひっかかれることは国内でも非常に、極々、すんごく、希だとは思います、が、私が扱うのは、野生化した、または野外で生まれ育った野生のイグアナです。この危険は常につきものです。また、イグアナは、尻尾を身を守るツールとして、ムチのようにしならせて相手を叩きます。捕獲時に叩かれて手が痺れたと調査員が言っていましたし、イグアナの口には鋭い歯が沢山並んでいます。捕獲時に長靴のソールをべりっと噛みちぎられた調査員もいます。

野生のイグアナはとにかく素早い。子供のかけっこくらいのスピードが出ます。ペットは、どうやらのんびりしているらしいですね。私は屋内で飼育されている個体(ペット)に関しては飼育経験がないのでよくわからないのですが、野外で遭遇したイグアナについての知識は少なからず持っています。

3.イグアナがもつ未知数の危険性

先ほど野犬の話をしましたが、狂犬病という病気をご存じですか。発症したらほぼ死亡する可能性がある非常に危険な病気です。日本では昭和31年を最後に発生はありませんが、海外に旅行に出掛けて犬に噛まれ、帰国してから狂犬病を発症した例が2例あります(最近だと2006年)。野犬は今でもこのような病気をもっている、かもしれません。もっていない、かもしれません。イグアナはどうでしょう。イグアナは狂犬病はもっていませんが、どんな病気をもっているかわかりません。例え人に感性しなくとも、他の野生生物に感性させる可能性もあります。そのあたりが未知数です。インフルエンザも、鳥が運び、ブタが発症し人に感染(H1N1などA型)しと、野生生物(鳥)が家畜やヒトに影響を与えている実例があります。ウィルスは生命体でなくDNAなのでよく変異します。鳥から直に人に(さらに人から人に)感染するようになった鳥インフルエンザ(H5N1)は記憶に新しいでしょう。
 今後、イグアナがどのような脅威になりえるかはわかりません。わからないから怖いとも言えます。

今後どうするか?(以下追記:2015年2月)

駆除を続けた方がよいと私は考えます。この記事は2010年に書きましたが、イグアナは2014年までにも石垣島のいたるところで発見されています。この記事を書いた頃のとは別件で、ヒトが放したか、それとも生息範囲が広がったのか…。それは解りません。

これ以上イグアナが増え続けないよう、継続した対策を求めます。

メディアの方へ。

外来生物の駆除に関する番組を作りたいとのお問い合わせをよくいただきますが弊社ではお電話やお問い合わせをいただいても、ここに書かれている以上の情報はお伝えできかねます。生物や法律に関したことはもちろんですが、何よりイグアナが生息する地域に観光客が来たり、無許可のテレビ取材が入ったりすることによって「不審者かどうかの判断がつかない」と公民館及び学校、地域住人が不安に思っているとの訴えを聞いております。そのため、上記サイトには生息場所などの情報は一切伏せて記載しております。弊社はツアー業に併せてロケーションコーディネートもしておりますが、デリケートな問題なので特にバラエティーに関してはほぼお断りしているのが現状です。

バラエティー番組の多くが、本来島にはいないイグアナを「悪者」として紹介し、それを駆除する「英雄」的な立場でタレントを用いてますが、私はその構図には賛成できかねます。悪者は、イグアナを野外に放した「ヒト」であり、。犠牲者は「イグアナ」です。事実をゆがめない番組には惜しみなくご協力させていただきますのでご連絡くださいませ。

2 Comments

真知子

お疲れ様です。イグアナは見た目で「無理!」と思いましたが、アキラさんの日記読んでちょっと興味持ちはじめました(笑)

遠い外国から持ち込んで、それをペットとして売り買いして、都合で飼えなくなったからといって外に放して野生化。(故意に逃がしたのではないという説もあるけど、管理ができていないという点では同じレベルだわね)

私としてもオオヒキガエルもグリーンイグアナでも必死で生きているだけなのになぁ・・と思うと本当に切なくなるよ。それが他の生物に害をもたらすから税金を使って捕獲することに違和感を感じる人がいるっていうのはわからないでもないんだ。

でも、もとの状態に戻すことは本当に大変だし
人がやってしまったその責任は人がとらなければならない
本当は飼っていた人が責任をもってボランティアでもしてくれれば一番なんだけどね・・・ 

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あきら(りんぱなのガイド)

メッセージありがとう。たまに手伝いにくる?w 
真知子さんの言うように「逃げた」も「逃がした」も結果は同じだから、一番いいのは、逃がさないことなんだなぁと思います。

例えばオオヒキガエルは法律で規制されていて、起訴されれば莫大な罰金を支払わなければならないこともあります。(イグアナはまだそのレベルの規制はされていないけれど)

オーストラリアも、農業のためにオオヒキガエルを輸入していた過去があるけれど、日本の10分の1に近い国家予算の中で、オオヒキガエルにあてられた予算は日本の7倍もあるんだって!!
お金の額が問題じゃなくて、どれだけ問題視されているかが、この数字に反映されているんだと思うんだ。僕らももっと高い意識をもっていけば、気軽に外に逃がしたりってことをする人がいなくなると思う。最近流行の環境教育なんていう言葉だけじゃなく、大人達にもちゃんと理解してもらえるような仕組み作りが大事で、今後の社会的な問題なんだと思う。

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