夕方、犬の散歩に出かけたときに、不思議なものを拾いました。
海にはたくさんの不思議なモノが落ちています。私は、仕事で、遊びで、毎日のように海岸を歩きながら沢山の漂着物に触れてきました。でも、これを見るのは初めて。これは何でしょう?
ぱっと見、データロガー(データロガーは、データを蓄積する機械)っぽい雰囲気で、どことなく軍用品風な滑らかなグレー。中身はデータの蓄積か、それともGPSの受信、または発信機。又は両方の機能があるのか…。頭の中をいろいろな想像が巡ります。
ラベルを探すと、「Wildlife Computer」Maid in USA というしっかりとした印字が装着されています。ワイルドライフコンピュータ。いい名前じゃないですか。
私は道具好きなので、こういうものを見るとつい、いろんな想像が頭を巡ってしまいます。まずサイズ。仮にこれがアンテナだとして、電波の受送信をするにはバッテリーが必要です。このサイズなら123R(カメラとかの)。側面両脇の金色のパーツは照度?(日光を受けるとGPSデータのやりとりのトリガになるとか)その隣のアルミテープは水温?でもこのサイズにコンパクトに全部収めるには、123Rより小さなバッテリー。その場合は、送信機とするとパルス発信だとしても運用期間は半年も持たないか。
そも形が流線型なので、海流調査用のブイではなく、なんらかの海洋生物に取り付けるもの。仮にGPS電波の送受信をする為の道具だとすると、アンテナは海面から上に出なければならないので、水面に出るパーツ(背びれ、背中、甲羅)をもつ海洋生物としたら、サメ・エイなどの軟骨魚類、鯨類(げいるい)、そしてウミガメ。上記の半年という運用期間は、背びれが水面から出たときだけパルス発信したとして、最大でという意味。でもそんなに持たないかな。
ちなみに
- ・海洋生物を追うGPSの発信機には、現在位置をリアルタイムで追跡して、一定期間の運用が終わったら自動的に外れて、こうして海の藻屑となるように作られているものもあります。
- ・データロガー兼送信機であれば、貯めたデータを衛星に伝える為に、数本のバッテリーを内蔵しているものもあります。上記の海洋生物の移動距離は最大で数千キロ(ザトウクジラなど)に及ぶこともあるので、回収することは最初から考えずに衛星に送るわけです。
このロガーなり発信機なりが完全に水中から露出することを目的として作られていると考えると、大きな背びれをもつ生きもの(エイとウミガメの線は消えた)になります。サメか、鯨類か。
なんて事を考えながら家に帰って、製品名で検索してびっくり。この小さな本体の中に驚くべき性能が詰まっていました。
MiniPATは、浮遊動物の動き、生息環境の利用、および放流後の生存を研究するために使用されるポップアップ衛星アーカイブタグである。信頼性、耐久性、使いやすさに重点を置いて開発されたMiniPATは、安定した低抵抗形状、堅牢なウレタンノーズ、無線追跡回復用のピンガーを特徴としています。センサーデータは展開中に収集され、オンボードメモリにアーカイブされます。その後、あらかじめ設定された日付に、そのタグはホスト動物の表面から放出され、アーカイブされたデータの要約がArgos衛星にアップロードされます。
簡単に言うと、サメとかクジラに装着しておけば、その動物の生態を詳しく数値化してくれて、自動的に外れて浮上して、専用の衛星にデータをアップしてくれるんだそうです。
研究者の方は、自分のデスクで海洋生物の情報が簡単に手に入るのです。
- ・取得するデータは75秒〜10分おきに記録でき、最大700日ほど運用が可能。
- ・動物の水平的な生息地の利用と移動を計算可能。他にも、垂直方向の深さの動き、環境温度、トラッキングデータ、深度/温度時系列のサンプリングデータ、ダイビング行動、時系列の深さと温度(PDT)のプロファイル、混合層分析、時系列温度、時系列ヒストグラム 死亡率の検出?などが可能とのこと(google翻訳)
アーカイブメモリが16MBって、1データどのくらいの容量なんだろう(私の水温データロガーは15分おきに水温を自動記録して、30日で1kb程度)。このコンパクトボディで耐水圧2000m(マッコウクジラなんてもっと潜りますからね)。あらゆる測定をしてプログラムした日に自動的に離脱。その後、専用衛星に自動アップロード。やー、アメリカさん凄すぎます。
いったいどんな海洋生物に取り付けられ、どこから流されてきたのでしょう。ふと頭をよぎったのはサメの存在。今、アメリカをはじめ世界各国でサメの保護が盛んです。もしかすると、サメに取り付けられていたのでは。
もう既に情報を送り追えた亡骸であることはわかっているものの、でも折角なのでシリアルナンバーを掲載しておきます。
Point pick up . 24.45567° 124.21229°
回収しないのはわかってるけど、どんな研究をしてたのか知りたい!先生おしえて!笑
メアリー助教授(仮)
なんていう金髪美人の研究者との出逢いがあったりしませんかね。あるなら急いでベルリッツ行きますけど(っても島にないけれど)
既に衛星に接続され、その生きものの情報を送り終え、その任を終えた小さな黒いカプセルが遠くの海と私をつないでくれました。
明日はどんな出会いがあるだろう。来週も、皆さんにとってよき出会いのある一週間になりますように。
浜でデータロガーを拾った。ワイヤーはアンテナ?
どんな海洋生物に取り付けられてたんだろう。この中にはその生きもののどんな情報が詰まってるんだろう。
シリアルナンバーも書いてあるし、メーカーに連絡してみようかな。 pic.twitter.com/nVPSGiNUj6— りんぱな| あきら (@RinpanaAkira) 2018年2月8日
蛇足ですが、最後にお気に入りの動画を。
本当、格好いいよなぁ。