石垣島では、残念なことに、環境の変化や立ち入る人たちの影響によって、ヤエヤマヒメボタルが減っている場所が多くあります。 ところが、当社フィールド(ホタルの森)では逆のことが起きています。
ツアー参加者が森を歩き、暗闇が守られ、その対価として環境整備が循環することで、結果としてホタルが増えていく――「人が来れば来るほど、ホタルが増える」という、一見不思議な現象が、当社フィールドでは感覚的な印象ではなく、長年の観察と記録によって確認されています(具体的な数字は末尾のリンクより)
これは魔法ではなく、私たちが15年以上かけて積み重ねてきた、「人と自然が共存する、懐かしくて新しい仕組み」の結果です。このツアーを案内する私(ガイドあきら)の生い立ちも含めて、少しお話させてください。

「手つかずの自然」だけが、正解なんだろうか?
私は子どもの頃、家の裏にある広大な里山を走り回って育ちました。 ある時、里山の木々が伐採されるのを見て、子ども心に「自然が壊された」と悲しくなったことがあります。
しかし、しばらくしてその場所に行ってみると、木が生えていた場所には太陽の光が差し込み、そこではトカゲやチョウたちが日向ぼっこをしていました。そして、切られた木にはシイタケの菌が植えられて整然と並び、そこも生きものの隠れ家になっていました。薄暗い森だった時には見られなかった光景に、子どもながらに感動したことを今でも覚えています。
「人の手が入ることで、豊かになる自然もあるんだ」
その時に見た、循環する里山の風景が、私の原点です。 北米のような「人の手が入っていない自然(Wild Nature/Wildaness)」もとても魅力的ですが、日本には昔から、人が手入れをすることで生態系が豊かになる「里山(Satoyama)」という知恵があります。
私がこの石垣島でやろうとしているのは、まさにその再現。 「沖縄版の里山づくり」なのです。

忘れ去られた古道が、ホタルの楽園だった
私たちの専用フィールドは、新しく作った観光用の道路ではありません。 かつて生活のために使われ、やがて役目を終えてひっそりと森に還ろうとしていた「古い未舗装路」です。
私たちはこの「森の骨格」を活かし、少しだけ手入れをしました。 風の通り道を計算して木々を整え、下草も増やしていく。 そうすることで、乾燥に弱いホタルにとっての「最高の湿度」と「隠れ家」が生まれました。
現在では、ホタルだけでなく、リュウキュウコノハズクのペアが増えたり、国の特別天然記念物であるカンムリワシも餌場に活用するようになったり、森全体の生態系がどんどん元気になっている様子を感じます。 ここは単なる観光地ではなく、「人が寄り添うことで、自然が蘇る場所」なのです。

写真: 巣を守るリュウキュウアオバズク
フクロウなどはとても敏感。人が頻繁に往来する場所では安心して子育てができないと言われていますが、もう何年も、この順路の真上で子育てを続けています。人数制限をしていることや、公共の場所でないため、大騒ぎする人もいない。ガイドあきらの「小さな気遣い」が、小さな命につながります。ツアー前のブリーフィングでは、フクロウの見つけ方もご説明します。
ジャック・マイヨールの言葉と、この森への想い
私の好きなフリーダイバー、ジャック・マイヨールは、こんな言葉を残しています。
“人には2つの役目がある。ひとつは、愛を学ぶこと。 もうひとつは、植物や生きものが、バランスをとって生きられるように見る(守る)役目がある。”
私はこの一節を、「人間が自然を上から守ってあげる」ということではなく、「自然の循環の一部として、過不足のない位置に立ち続けること」だと受け取っています。
では、どうすればそんな役目を担えるのだろう? そう考えたとき、よくある「ゴミを拾おう」とか「我慢して守ろう」という考えの、その先を見たいと思ったのです。
私が目指したのは、 「お客様が心からツアーを楽しんだ結果、気づけばホタルが増えていた」。 そんな無理のない、幸せの循環でした。
それを教えてくれたのが、記事の冒頭でお話しした「子どもの頃から見続けてきた里山」の存在です。
木が切られ、人の手が入ることで、かえって生きものが溢れ出すあの光景。 「この里山の概念を活かせば、人が入ることでより豊かになる自然が、ここにもきっとできる」
そう信じて森づくりに携わり15年。試行錯誤を重ねる中で、ここ6年ほどは、毎年ホタルの数が目に見えて増え続けています。 この森では「人が関わり続けること」と「ホタルが増えること」が、確かにつながっているのです。

観光と自然のジレンマ、そして見つけた希望
日々、観光業の最前線にいると、開発によって失われていく自然に胸を痛めることもあります。 「人が活動すればするほど、生きものが減り、自然が衰退する」。 いまの子供たちにとって、それは当たり前の、帰ることのできない事実のように映っているのではないかと、不安になることもあります。
「それって、本当に変えられないんだろうか?」
実は、私も中学生のころからそうした疑問を抱き続けていました。 地球規模の環境問題なんて、ちっぽけな私にはどうすることもできないと。
でも、この森は違いました。 この森は、私が見守ることができる広さだったのです。
私が手を入れると、森は応えてくれる。 このツアーは、子どもの頃からの私の問いに対する「答え」となりました。

写真: この森はたくさんの生きもに出会えるため、昼間のツアーでも時々訪れる
「人が来れば来るほど、ホタルが増えていく」
「人が来れば来るほど、ホタルが増える」 そんな言葉を聞くと、自然に詳しい人ほど眉唾物(まゆつばもの)だと思うかもしれません。 しかし、この森ではそれが現実に起きています。
人が関わり続けることで環境のバランスがより良くなり、かつての里山のような”もっと自然な状態”でホタルが増えているのです。(具体的な調査データは末尾のリンクより)
- あなたが歩くことで:道が適度に固まり、ホタルが出会いやすい空間が維持されます。
- ルールを守っていただくと:繁殖に必要な「完全な暗闇」が確保されます。
- 楽しんで頂きながら:ツアーの収益が、翌年の環境整備や調査へと還元されます。
私は今までに色々なツアーを企画、開催してきましたが、このホタルツアーが一番のお気に入りです。 中でも「自然保護を学ぶスタディツアー」ではない部分が好きだし、ただただ、どこよりも美しい光景がここにあって、沢山の人がそれを見て驚き、感動し、笑顔になって帰る。 そんなところが大好きなんです。
そして、あなたが「楽しんで森を歩く」という行為そのものが、結果としてホタルの未来を支える力になっている。 そんな、肩肘張らずに自然を守ることができる雰囲気こそが、こどもの頃に見続けてきた、里山にある「日常」のように思えてなりません。
この森のホタルを増やすことは、私一人の力だけではできません。 あなたが来てくれるからこそ、この森は来年も輝くことができるのです。
あなたとお会いできることを、森も私も楽しみにしています。
・このページが実際にカタチになったホタルツアーはこちらです[ 人が来れば来るほどホタルが増える。りんぱなの石垣島ホタルツアー ]
・このページの根拠、調査データを綴ったページはこちら[【保全レポート】なぜ、この森だけホタルが増えるのか?技術的アプローチと15年の記録 ]
私がこどもの頃に育った場所は、東京都町田市にある里山。小田急線柿生駅から鶴川駅にかけ、今は広大な住宅街(千都の杜)へと姿を変えてしまった能ヶ谷(のうがや)の里山です。平成狸合戦ぽんぽこの舞台地としても知られ、高畑監督は舞台挨拶で「この作品はフィクションではなくドキュメンタリー」と語ったそうです。90年代の東京ですが、家の前の畑でタヌキやキジが見られ、少し歩けばホタルも当たり前にいました。今でも時々、夢に出てくる場所です。